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これまで、会社のオフィス移転のプロジェクトを何度か行っています。3回目くらいから慣れてきて、引越完了までスムーズに実行できるようになったかなぁという感覚なのですが、初めてプロジェクトリーダーをやる場合など、戸惑う事も多かったりします。

そこで今回は、オフィス移転をするときに行うべきタスクや考え方についてまとめてみたいと思います。

※以前同様のエントリを会社のblogに記載をしていたのですが、いろいろ諸般の事情で無くなってしまっており、「あのエントリどこいったの?」と問い合わせを頂いていたのでその内容のサルベージと、その後も何度か移転をやったりしたので、その経験も踏まえ大幅に加筆した内容です。

移転時期はどのように決めるか

そもそも、いつごろ移転(および移転準備を)するかまずは決めなくてはいけません。なかなか難しい部分です。特にベンチャーだとメンバーがどんどん増えたりする会社さんが多いので、オフィス担当者は頭を悩ませます。候補になる物件を社長にプレゼンしたりすると、「このオフィスに入ったとしていつまで使えるの?」とか聞かれたりしますが、即答は難しかったりします。その時期の見定めには、

  • 今後の人員計画
  • 予算(数値)計画
  • 現状のオフィスとの契約
  • 次のオフィスで想定する広さ・ビルの規模

などから総合的に判断していくしかないかなと思います。

今後の人員計画

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まず一番重要になるのは今後の人員計画です。検討する際は人事部門などと連携して、現状の人員数、今後の採用計画(どれくらいの人が、どんなペースで増えていくか)について精査する必要があります。このとき知りたいのは「必要になる座席数」なので、人員数については、いわゆる正社員のみではなく、業務委託・派遣などのメンバーも当然考慮する必要があります。

ポイントになるのが、オフィスの限界座席数の見積もりです。会議室や共有スペースなど、座席を設置していないエリアは座席数という観点では余剰になります。そういったエリアを潰して、これでもかくらい座席数を拡張すると現状のオフィスを延命できます。そういった余剰が無い場合や、拡張する工事に費用をかけたくない場合は、現在の座席数が限界座席数になります。

そんなこんなで、いろんな数値を精査していった後に、例えば、

(「限界座席数」 - 「現在の人員数」) ÷ 毎月の増加予定人数

みたいな計算をすると、「今のオフィスは、あと○ヶ月使えるね」とかが計算できたりします。

予算(数値)計画

オフィスにかかる賃料や敷金などのキャッシュアウト、引越にかかるいろんな諸経費や新規家具などの大量購入は、会社の計画や財務諸表に与える影響がそこそこ大きいです。既に移転を計画上織り込んでいる場合などは問題ありませんが、そうでない場合、数値計画との兼ね合いや、財務状況の確認なども念の為担当者と連携しておく必要があります。

現状のオフィスとの契約

現在入居しているオフィスの契約がいつまでか確認が必要です。タイミングによっては、契約期間満了までに移転を行った方が、更新にかかる費用などが発生せず、効率がいい場合があります。

余談ですが、定借なのか普通借家なのかにもよるものの、契約の残存期間も考慮が必要となります。まだ複数年契約期間が残っている場合は、本社移転は行わず、近隣に中小規模のサテライトオフィスを設けるなどの方が効率が良い場合があります。

また、オフィス物件の場合だいたい、「このオフィス出ていくね!」と事前に伝える必要があり、その旨が賃貸借契約書にて事前に決まっているので確認しておきましょう。「解約予告○ヶ月」とか言ったりするのですが、大体6ヶ月〜1年くらいが相場だと思います。

ただ、次に入居するオフィスが決まってないのに解約予告を出すのはなかなかリスキーです。家なき子になってしまう可能性があります。解約予告を(書面で)出すタイミングには、次の物件との賃貸借契約がまとまってからの方が安全です。

これらを踏まえ、「解約予告を出すまでに新オフィスの選定を終え、契約内容をまとめておく」ためにはどれくらいの期間を要するかも考慮する必要があります。

次のオフィスで想定する広さ・ビルの規模

オフィスは賃貸借契約を締結した後即日引越を行えるわけではありません。賃貸期間に入った後に、会議室を作ったり、天井に照明を入れたり、エントランスを作ったり、配線をしたりなどの、内装工事を行って、オフィスを完成させてから入居になります。

内装工事と言っても、必要な配線をしてあとは机を置くだけのようなものであればそんなに期間はかかりませんが、オフィスの広さが大きくなればなるほど、間取・デザイン・レイアウトの検討にそれなりに時間を要しますし、意匠に凝ったものを作ろうとすればするほど、その施工期間は伸びます。本当に小規模のオフィスで、短いものだと数日で工事を完了するものから、中規模だと3ヶ月、大規模であれば半年から1年かけて行うものもあります。

次に入居するオフィスの広さによって期間は様々だと思うので、そのあたりは人数からオフィスの規模を逆算し、期間についてはゆとりを持って考えておく必要があります。

なお、新築のオフィスビルに入居する場合、各フロアで一斉に契約&入居工事が開始されるなどの事情もあり、通常のオフィスビルに入居するよりも余計に期間がかかるケースが多いので注意が必要です。

どれくらいの広さのオフィスを借りたらいいか?

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さて、時期が決まったら次の問題はどれくらいの大きさオフィスを借るかの検討です。規模がまだ小さければ、現状+αくらいの人数が入る規模の広さにしておいて、狭くなった時点でまた移転などのフレキシブルな対応も可能ですが、オフィスは大きくなればなるほど、入居時にかかる費用が大きくなり、そうなると小まめに移転するわけにもいきません。一方で、ずっといられるようにとかなり余剰を持ってしまうと、入居時点で人数に見合わない賃料を抱えてしまうことにもなります。なので、次に入居するオフィスで何年耐えるかについても事前に検討が必要です。

ここでも、人員計画を踏まえ、

(「次のオフィスの限界座席数」 - 「現在の人員数」) ÷ 毎月の増加予定人数

みたいな計算をすると、「次のオフィスは、あと○ヶ月使えるね」とかが計算できたりします。この結果、1年とするのか3年とするのかは会社の考え方次第ですが、物件によっては契約期間が定まっている場合があるので、その期間そのオフィスで耐えうるかを実務的には計算していくことになります。

ちなみにオフィスの坪数と収容人数の関係性ですが、以下がてらもとのだいたいの感覚です。物件のリストを見る際など、坪数÷2で収容人数の目算をしたりします。

(一人あたり)

  • 2.5坪以上:贅沢なオフィスだなぁ〜。かなり広々使えますねこれ。な状態。
  • 2.5坪:共用スペースなどもあり、まだ結構ゆとりがある状態。
  • 2坪:普通ですね。狭くもなく、広くもなく。な状態。
  • 1.5坪:そろそろ限界が近いですねこのオフィス。な状態
  • 1.5坪以下:下がるにつれて、窮屈感を訴えるメンバーが出てくる。酸素が薄いなど社内から苦情が出る状態。

※あくまで個人の感想です。

移転プロジェクトの登場人物

さて、移転時期などが大体見定まったら、今度はチーム編成をする必要があります。以下は移転にまつわる社外の登場人物を記載しておきます。手始めに不動産担当者から始める感じですが、会社のスタンスによって、複数やりとりをする場合や、最初から仲介1社で行う場合など様々です。

  • 不動産担当者:仲介の営業の方 or デベロッパーの営業の方などです。物件を探す上で協力してくれます。
  • ビル管理:入居するオフィスビルの管理会社さんなどです。ビルに紐づくのでこちらで特に選べません。ビル側で施工管理を行う「B工事」についてのやりとりや、入居後の清掃業務の依頼、共用部分の利用方法などについてやりとりを行います。
  • PM会社:移転プロジェクト全体をマネジメントしつつ、会社側に立って管理をしてくれる会社さんです。
  • デザイン会社:オフィスレイアウトやデザインなどまさにオフィス全体をデザインしてくれる会社さんです。

※PMとデザインは同じ会社で行える場合もありますが、規模が大きくなると大体個別にお願いすることになります。また、お願いをする際、事前にコンペを行ったりするとその分プロジェクト期間が伸びます。

行うべきタスクまとめ

前置きが長くなりました。だいたい上記が整えば、さぁいよいよプロジェクトスタートです。タスクを以下にジャンルごとに書き出します。モレがあるかもしれませんが、大体網羅できていると思います。PMの会社さんと契約する場合、大部分のタスク及びスケジュール管理についてはフォローをしてくれるというかやってくれます。プロジェクトマネジメント会社ですからね。

新オフィス物件決定系

  • 候補物件ピックアップ
  • 必要に応じて内見など
  • 条件交渉(ハードな交渉をする場合はブレイクする可能性もあるので、別の候補もあったほうが良い)

意思決定系

  • 社内主要メンバーのコンセンサス(社長や経営陣などと新オフィスについて合意。必要に応じて経営会議などで決議)
  • スケジュールの作成、移転予定日の決定
  • 取締役会承認
    • 重要な契約の締結を取締役会決裁としている場合などは、その契約を行う旨の決議
    • 移転時の本店住所変更決議
    • 定款に定める本店所在地(通常行政区分)が変更になる場合、定款変更に伴う株主総会招集決議
  • 株主総会(定款変更決議)

住所変更手続き系(だいたい移転後)

  • 公的機関
    • 登記簿の住所変更
    • 税務署
    • 都税事務所
    • 社会保険事務所
    • ハローワーク
    • 労働基準局
  • 金融機関系
    • 銀行
    • 法人クレジットカード
  • 他継続契約しているところなどに対して登録住所変更

広報系

  • 社内メンバーへの連絡
  • 社外
    • 社外への連絡方法の決定
    • 社外への情報解禁日の決定
    • (やる場合)お知らせ葉書の作成とか発送 ※デザインとか送付先の取りまとめとか大変なのでやらないがおすすめ
    • (やる場合)メールでの連絡文面の作成&社内シェア
    • (やる場合)プレスリリース ※やる場合は情報解禁日に合わせる
  • ホームページ(移転後)
    • 会社概要に反映
    • アクセスに反映
    • 沿革に追加

備品系

  • 名刺(ついでにデザイン刷新とかするとさらに大変)
  • 社名入封筒
  • ゴム印(アスクルで頼むなど)

【重要】通信系

  • ネットワーク(新オフィス)
    • 申し込み
    • (通信会社さんの)下見立会
    • 開通工事立会
    • 電話回線が別であれば上記と同様に
    • 電話番号が変わる場合、割当の検討など
  • ネットワーク(旧オフィス)
    • 解約もしくは移転手続き
    • 電話回線がある場合は同様に
  • 郵便局に転送届提出

旧ビルを出る準備

  • 原状回復工事
    • 見積依頼(依頼から内見したり見積が出てくるまで結構時間がかかる)
    • 相見積依頼
    • 発注
    • 清掃契約などの解約(これも解約予告があったりするので注意)
    • 明け渡し日決定
    • 引渡し日決定
  • 引越し業者選定(PM会社がやってくれる場合がほとんど)
    • 見積依頼
    • 相見積
    • 発注

荷造り

  • 社内メンバーへの周知用荷造りマニュアル作成
  • 荷造りマニュアルを使用してガイダンスを実施
  • 断捨離(不要そうなものはとにかく事前に捨てまくる)
  • 共用備品は早めに荷造りしておく
  • 社内販売(ウオーターサーバーとか、自動販売機とか)に移転時期を伝えてどうしたらいいか聞く

新ビルに入る準備

  • 物件契約
    • 契約書内容確認(リーガルチェック)
    • 契約に必要な書類の準備…会社謄本、印鑑証明書(法人)、印鑑証明書(社長)
    • 契約
  • (依頼するなら)清掃契約
    • 契約書内容確認(リーガルチェック)
    • 契約
  • その他付随する契約があったりする
  • 防火防災
    • 防火防災計画の作成
    • 提出(ビルに出す場合や、消防署に自ら出す場合など様々。ビル管理に確認を)
  • 館内サイン(ビル内の表示)の申込手続き

新オフィス内容関係

  • 必要な会議室数、必要な機能(休憩スペースなど)、座席数などの主要な仕様条件を決めてデザイン会社に伝える
  • レイアウト
    • 内容検討…案もらって悩む
    • 素案確定して、社内の要人にヒアリングしたりしながら調整
    • レイアウト決定
  • 座席
    • レイアウトにそって座席配置を検討
    • 座席配置を決定
    • 決まった座席配置をもとに、各人の座席を決定(部署ごとに大体割当てた後に、部署の責任者に決めてもらう)
  • レイアウト・座席にそって配線(電源、LANなど)検討・決定

新ビル用備品購入(家具などの必要なものはPM及びデザイン会社がリストアップしてくれる)

    • 個人用デスク追加
    • 会議室用
  • 椅子
    • 個人用
    • 会議室用
  • 他オフィス家具
  • ネットワーク構築にかかる資材購入(社内のインフラ担当に任せよう)
  • 他必要なもの購入(傘立てなど)

労務管理関係

  • 近隣住宅手当などを行っている場合はその扱いなどについて事前に精査
  • 交通費変更手続きについて検討・決定
    • 本人への事前確認
    • 給与計算に反映
  • 入退室管理とか勤怠の打刻機とか設置場所などを決めてオフィス仕様に入れておく

その他

  • 移転パーティーをやるなら準備と実行(正直移転プロジェクトメンバーはヘトヘトなので、移転日にやらないほうがよい)

タスク管理していく上でのポイント

ポイントその1:優先順位は、通信系>それ以外

ITがこれだけ発達した世の中ですので、ベンチャー企業にとってはネットワーク命です。極端な話、それ以外はどうとでもなります。机が無ければ床に座ればいいし、電源コードとかが足りなければ電気屋さんに走ればいいし、空調が効いてなければ着こめばいいのですが、ネットワークが無いと何にもなりません。

また、入居段階ではスッカスカなオフィスでも、1年後にはギューギューみたいなこともありがちなので、常駐の人員が増えまくってもいいような設計にしておくこともオススメです。通信量が多くても途切れること無く、早い通信がいいですよね。

ネットワークまわりについて明るくない場合は、社内のインフラ担当やそのあたりに詳しいエンジニアなどに協力を要請して任せてしまったほうが安全です。

あと、地味に忘れがちな郵便局への住所変更&転送届。これをやっておかないと、請求書などの重要な郵便物が迷子になってしまいます。結構重要です。

ポイントその2:入居前と後でやることを分ける

時間も無い中で、入居前にやっておかないといけないことと、移転後にやればいいことを明確に分けておくことも重要です。

「社内のメンバーがどれだけ最短で通常営業に復帰できるか」が最も大事と考え、そこから業務への影響がある場合=入居までに完了、ない場合=移転後できるだけすみやかに。みたいな感じで分けていくなどが考えられます。

会社の規模によっては、バックオフィス人員が限られていることが多いかと思うので、やること、やらないことを仕分けしておくことは大事かと思います。

ポイントその3:個人デスク荷造の説明には力を入れる

荷物の中で、一番量が多く、かつ、メンバーそれぞれに作業をお願いしないといけない部分です。ここでトラブルが続出すると、荷造りをする日にてんてこ舞いになったりします。

引越し業者さんが決まったあと、荷造りのマニュアルがもらえたりします。そのマニュアルをもとに、資料を作って社内にガイダンスを事前に行うなどを行うとスムーズです。

ポイントその4:社内協力は必要に応じて

引越日2週間前くらいから、バタバタ具合が増してくるのですが、そんな時に、「手伝いましょうか!」とありがたい言葉をかけてくれるメンバーが現れます。

本当にありがたいのですが、一方で、アサインしまくっていると、「次何やったらいいっすか!」「次何やったらいいっすか!」「次何やったらいいっすか!」の嵐となり、そっちへの対応で逆に大変になったりもします。

一方で、「これ、こんな感じで処理しといたらいいっすか?」みたいな具体的なHOWの質問と共に手伝ってくれるメンバーは超ありがたかったりするので、周囲はそういった心構えを持つと、移転担当者は泣いて喜びます。

というわけで

いかがだったでしょうか。オフィスが新しくなることは、なんだか気分も変わっていいものです。移転はそこそこ大変ですが、そういった思いで気分をドーピングして、楽しみながらやると辛く無いです!ちなみに私はお腹いっぱいなので、しばらくやりたくないです。

追伸)前のやつの魚拓ありました

以前のエントリは、以下の魚拓がありました。興味あればご参照下さい。

【魚拓】保存版!オフィス移転でnanapi管理部が行った全タスクまとめ | nanapi TechBlog | https://megalodon.jp/2014-0224-1930-22/nanapi.co.jp/blog/2014/02/24/preparations-for-moving-office/