クラウドソーシングを利用して業務の一部を委託しながら、仕事を進めている会社さんも増えてきていると思います。国内では、最近オプト社との業務資本提携したりTVCMを開始したりしてるランサーズさん、昨年末に上場したクラウドワークスさんあたりが有名かと思います。

今回は、そんなクラウドソーシングを企業が利用した場合、業務をお願いしている個人の方への源泉徴収をしなくてはいけないよ!というお話です。以前、税理士の方から指摘をいただいた事があり、nanapiでも至急対応を進めている内容になります。

前提の整理

クラウドソーシングってなに?

そもそもクラウドソーシングって何だろ?というのを簡単に整理しておきます。

Wikipediaによると、

特定の人々に作業を委託するアウトソーシングと対比される。 クラウドソーシングは狭義では不特定多数の人に業務を委託するという新しい雇用形態を指す。

引用:クラウドソーシング - Wikipedia

とあります。これまで、業務を外注するためには、できそうな人を探して、価格の交渉とかを行って、などなど、色んなプロセスを経て行っていたのが、インターネットを介して色んな人に業務を外注できるので、発注者である企業はかなり便利だったりします。

源泉徴収ってなに?

これまたWikipediaによると、

源泉徴収(げんせんちょうしゅう)は、給与・報酬などの支払者が、給与・報酬などを支払う際にそれから所得税などを差し引いて国などに納付する制度である。主に個人に対しての支払金額が対象となる(受領者が法人の場合は、馬主に対する競馬の賞金のみが対象)。

引用:源泉徴収 - Wikipedia

とあります。通常、会社が個人にお金を支払う場合、所得税を引いておいて(源泉徴収)まとめて個人の代わりに国に税金を納める仕組みです。

アウトソーシングとクラウドソーシングのお金の流れを確認

さて、簡単なデザイン業務を3万円で会社が個人に外注した場合を例示として、アウトソーシング(通常の外注)と、クラウドソーシングで、それぞれやりとりやお金の流れの違いを確認してみます。

アウトソーシング(通常の外注)の場合

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図のように、やりとりや、お金の流れなど全て、仕事を依頼する会社と受ける個人で直接になります。

クラウドソーシングの場合

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一方で、クラウドソーシングの場合、サービス事業者さんの立ち位置としては、あくまで「仲介業務」となるので、ちょっと複雑になります。

お金の流れだけ整理すると、

  • 会社からの支払は仲介会社に
  • 個人への支払は仲介会社から(その際に、仲介会社さんは手数料を受取る)

となります。ここで源泉徴収義務のボールが溢れちゃう危険性が発生します。

クラウドソーシングの場合の源泉徴収義務者はだれ?

さて、クラウドソーシングの場合の源泉徴収義務は誰になるのかという部分ですが、どうやら、現在は仕事を依頼する会社が源泉徴収を行う必要があるとの解釈みたいです。

ランサーズさん、クラウドワークスさんの利用規約にも明記されていました。

(2) 会員間取引によってランサーに支払われる報酬につきクライアント(チーム制におけるリーダーを含みます。)が源泉徴収をする義務があるとき、クライアントは、源泉徴収税の納付、支払調書の交付等の義務を履行するものとします。

利用規約 | ランサーズ | http://www.lancers.jp/help/terms

第18条  取引における法令遵守 

(1) 本取引によってメンバーに支払われる報酬について、クライアントが源泉徴収をする義務があるときは、クライアントは源泉徴収税の納付 、支払調書の交付等の義務を履行するものとします。

クラウドワークス利用規約【クラウドワークス】 | http://crowdworks.jp/pages/agreement.html

第15条  業務委託に関する法令の遵守

クライアントは個人に直接支払いをするわけではありませんが、各社とも、あくまで「ランサー」「メンバー」とされている個人とクライアントとの仲介の立ち位置に過ぎず、源泉徴収の義務は、契約の主体者かつ、支払側であるクライアントにあるという理解だと思います。

よく出来てる・・・。

となると、後の手続きがいろいろ大変

クラウドソーシングは事業側には大変メリットが多いですが、バックオフィスとしてはちょっと大変だなぁと思うことがありました。主に以下2点です。

会計処理

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先ほどのデザイン業務を例にクラウドソーシングを使用した場合の会計処理を考えてみます。会計処理をするためには、

  1. 30,000円が税抜の場合、消費税を乗じて消費税額を算出する(2,400円)
  2. 30,000円に源泉徴収税率(10.21%)を乗じて算出する(3,063円)
  3. 外注費などで30,000円、仮払消費税などで2,400円で借方に、貸方は現金・預金などで29,337円(30,000円+消費税-源泉徴収税)、源泉税預り金3,063円で仕訳を行う

みたいな感じになります。

1件だけならそんなに面倒ではないですが、これを利用した全件やるとなると、クラウドソーシングの件数が増えれば増えるほど、経理担当者の枕をそこそこ濡らすことになるなぁと思ったりします。

支払調書どうしよう

会社から特定の個人への報酬を通年で5万円以上支払った場合、「この人に報酬これだけ支払ったから、所得税これだけ納めてるよ〜」と報告をする、「支払調書」というのを提出しないといけません。

この支払調書を作る場合、記載事項に、受給者(受取った人)の氏名と住所が必要になります。これが厄介です。クラウドソーシングの特性上、どこの誰がオーダーした業務をやってくれたのかわからなくなっています。かといって個人の方に取ってみれば、クライアントの仕事を行う度に、自身の氏名と住所を伝えるのも手間ですし、顔が見えない中で不安かと思います。

氏名と住所がわからない状況でも、預かった源泉税を納付することは可能ですが、支払調書の対象になってくると、それはそれで厄介だなぁと思いました。

本当にクライアント側が源泉徴収義務者なの?

国税庁のページに、以下のような記載があります。

居住者に対し、国内において源泉徴収の対象となる報酬・料金等の支払をする者は、その報酬・料金等を支払う際に所得税及び復興特別所得税を源泉徴収する必要があります。

No.2793 報酬・料金等の源泉徴収義務者|源泉所得税|国税庁 https://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2793.htm

「その報酬・料金等を支払う際に」という記載が気になります。契約当事者として、クライアントが徴収義務というのもわかりますが、一方で、個人に最終的に支払うのは、クラウドソーシングの会社さんなわけで・・・。

悩ましい問題です。

oDesk(オーデスク)すごい

アメリカ大手のクラウドソーシング会社oDesk(オーデスク)はこのあたり、バシッと解決しており、自ら源泉等を行ってくれているみたいです(米国、カナダのみのようです)。日本でもそういったクラウドソーシング会社さんが出てくると、バックオフィス系の人はみんな喜ぶと思います!

というわけで

ちょっとした外注などで超便利なクラウドソーシングですが、源泉徴収に気をつけておかないと、トラブルになっちゃうので気をつけましょう!というお話でした。税金って、仕組みの理解が難しいことや、解釈が様々だったりする部分もあるのでとっても複雑です。がんばって今後も勉強していきます!

免責事項

てらもとの個人的見解も多く含まれている内容となりますので、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。詳細な情報や見解に関しては、お近くの税理士、会計士等に直接ご相談いただければと思います。