従業員数が片手に収まるくらいの人数の時は必要ないかもしれませんが、10人を超えてくるくらいの人数になってくると、そろそろ「社内規程」を作ったほうがいいタイミングが到来します。

※実際に後述の「就業規則」は、常時10人以上雇用する場合、作成して、所定労働基準監督署に届出を行う必要があったりします。

就業規則の作成義務と労働基準監督署への届出義務 | http://www.hmpartners.jp/shugyoukisoku/sakusei_todokede.php

そこで、nanapiで初めて社内規程を一通り一気に作った時の経験を元に、作り方やポイントについて書いてみます。

そもそも社内規程ってなんなのさ

どんな家庭にも大小様々なルールがあると思います。例えば、

  • プリンを買ったら名前を書いておく
  • 靴は脱いだら揃えておく
  • Tシャツを干すときは首元からハンガーを入れない

などです。ちなみに上記は我が家のルールではありません。

「規程」と言われると、何だか難しい感じがしますが、要するに、会社にとって必要なルールを定めておくことです。そんなに難しく無いです。

どうやったか

実際に作った際はおおまかに以下のような流れで作りました

  1. 作らなきゃいけない規程を調べる
  2. インターネットで対象の規程のテンプレートを探す
  3. ダウンロードした内容を元に、ちょっと修正する
  4. 完成!

以上です。大体片手間でやりながら2週間くらいで出来たような気がします。本気を出せば、1週間くらいでイケそうな気もします。

社内規程はどんなのがあるか

主には以下のような種類のものがあります。基本的なものをわーっと並べてみます。

基本経営規程

会社を経営していくにあたっての、基本的なルール類になります。主なものとしては以下のような物があります。

  • 定款
  • 取締役会規程
  • 監査役会規程
  • 株式取扱規程

組織規程

会社を構成する、組織に関連したルール類です。こちらも、主なものとしては以下です。

  • 組織規程
  • 業務分掌規程
  • 稟議規程
  • 内部監査規程

業務関連規程

業務を行うにあたってのルールです。

  • 販売管理規程
  • 購買管理規程
  • 固定資産管理規程
  • 外注管理規程

経理規程

経理処理に関連したものになります。

  • 経理規程
  • 勘定科目処理規程
  • 原価計算規程
  • 予算管理規程
  • 金銭出納管理規程

人事規程

その名の通り、人事に関連した規程類です。「就業規則」は働いたことがある人なら誰しもが耳にしたことがあるのではないでしょうか。数ある規程類で、作成するのが一番大変なんじゃないかと個人的に思っています。

また、雇用形態別に作成する方がおそらく一般的なので、就業規則(正社員)、契約社員就業規則、アルバイト就業規則、のように、雇用形態別に作成することになります。

  • 就業規則
  • 賃金規程
  • 賞与規程
  • 通勤手当規程
  • 退職金給付規程
  • 出張旅費・経費規程
  • 慶弔見舞金規程
  • 介護休暇規程
  • 育児休業規程

総務関係規程

総務関連のルール類になりますが、個人情報管理規程などは、総務の人以外でも関連してくるものになります。

  • 文書管理規程
  • 印章管理規程
  • 諸規程管理規程
  • 内部情報管理規程
  • 個人情報管理規程

シートでまとめてみました

このあたり、ちょこっとした解説付きで一覧をシートでまとめてみました。規程を作成する際とかにお役に立てると幸いです。ダウンロードなどして、ご自由にお使いください。

20141110_社内規程関連資料 http://goo.gl/4k17bi

※Googleドライブに飛びます。

社内規程の作り方

それでは作成のプロセスをもうちょっと細かく見ていきます。

STEP1:作らなきゃいけない規程を調べる

これもテンプレートや、参考になるコンテンツが結構あると思いますが、上記のリストなどを参考に、会社にとって、どんな規程が必要か検討してみてください。

はい、STEP1は完了です。

STEP2:インターネットで対象の規程のテンプレートを探す

MiraiZ

雛形一覧 - 経営支援総合ポータルサイト MiraiZ https://www.miraiz.bz/Template/Index/

いろいろ調べている中で、MiraiZ.bzというサイトに行き着き、ここから結構ダウンロードして利用させてもらいました。アカウント作成後、ログインが必要になりますが、重宝するかと思います。

他には、

なども利用しました。とにかく、作ると決めた規程とできれば同じタイトルのもの、無ければ近しいタイトルのものを入手しまくります。知り合いでテンプレートを持っていそうな人にダメ元で聞いてみるのもいいかもしれません。

STEP3:ダウンロードした内容を元に、ちょっと修正する

さて、ここは結構時間がかかるところです。文章をざっと読み込んで行き、実態と大幅に乖離している部分を修正します。

この、「大幅に」というのがポイントですが、ここは後述します。そんなに細かく見る必要はないかと思いますが、例えば、

  • 会社に「課長」は存在しないのに、文書内に「課長」が出てくる
  • 部署名とかも当てはめながら治す

とかです。読みながら、「ちょっとこれは今の会社に合わないなぁ」とか、「おっと、こんなの、この会社にないぞ!」みたいな、すんごくわかりやすく違う部分を修正していけばいいのです。

STEP4:完成!

完成しても安心しないでください。規程は、先ほど並べた「諸規定管理規定」の中で、取締役会の承認を得て、初めて会社のルールとして制定されます。亭主関白の家庭であれば、お父さんに、「今後プリンを買ったら名前を書いておこうと思うのですが、いいですか?」と尋ねてOKをもらう行為です。

ベンチャーであれば、経営者と従業員の距離が近いはずですので、「次の取会の議案に入れてください」と言いましょう。

補足

就業規則だけは、テンプレではなく、社労士さんとがっつり2〜3ヶ月間くらい議論を重ねて作成しました。ここだけは、従業員全員に影響が出る話ですし、会社の今後の風土などを左右しますので、時間をかけるべきだと思います。

この時の話は、別の機会で書きます。

なんで「そんなに細かく見る」必要がないのか

時間とかにすんごい余裕があるなら、細かく見ていって、キチンとしたものを作成してもいいのですが、特に初期の会社にとってこの段階でそこまでやっても、あんまり実益が無い気がしています。理由は大きくは以下2つです。

作った側からどんどん運用が変わってしまう。

ベンチャーは、どんどん人が増えたり、新しいサービスがすごいスピードで出来たりします。その度に、運用はどんどん変わってきます。結果、ルールと実態が合っていない部分が数年経つとかなり出てきます。

初めて規程を作る段階では、まだ少人数の場合は特に、その時点でのスナップショットでルールを作っても変わる前提になってしまうので、精緻なものは必要がないかなぁと思います。

規程は中身よりもその存在が大きい

じゃあ、中身なんでもいいじゃん。となっちゃうかもしれませんが、規程は「あること」がすごく威力を発揮します。

会社を運営していると、色んなタイミングで、チェックをされることがあります。

  • 税務署などの調査
  • 投資を受ける時などのデュー・デリジェンス
  • 監査法人、証券会社さんとのやりとり(上場を目指す場合)

などですが、まず、規程が揃っているだけで、チェックする人たちに、「ちゃんとしてるなこの会社」と印象付ける事ができます。ビジネスの世界は、一に信頼、二に信頼です。

その際、ルールと実態が乖離してしまっている部分があるのであれば、それは正直に伝えるとかすると完璧です。

補足

上場するときのチェックを、上場審査と言ったりしますが、その時は、規程(ルール)と実態(運用)がピタッと合致していることが求められると聞きます。その作業がとんでもなくとんでもなくとんでもなく大変だそうです。

というわけで

もう、3年以上前にnanapiの会社規程を作った時を思い出しながら書いてみました。「とりあえず」とは言ったものの、そこそこ大変ですが、作ってしまえば、思ってもみない時に役立ったりします。

がんばるぞ!